“INTERPOLと国際安全保障: 世界の犯罪と戦うためのグローバルな連携”

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INTERPOLと国際安全保障 世界の犯罪と戦うためのグローバルな連携 国際安全保障/機関・協定
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INTERPOL 本稿では、インターポールの組織構造と主要な活動内容、そして日本が果たしてきた役割と今後の課題について、最新の公的資料や学術的な視点を取り入れながら、分かりやすく解説します。グローバル化が進む現代において、国際的な捜査協力がいかに重要であるか、そしてインターポールがその中でどのような役割を担っているのかを深く理解する一助となれば幸いです。

INTERPOLと国際安全保障:世界の犯罪と戦うグローバル連携の最前線 – 日本の役割と未来への挑戦

サイバー空間から実世界まで、国境を越える犯罪がかつてないほど巧妙化・複雑化し、私たちの平和と安全を脅かしています。このような状況下で、世界196の国と地域を結び、国際社会の治安維持に貢献しているのが国際刑事警察機構(INTERPOL、通称インターポール)です。1923年の設立以来、インターポールはテロリズム、組織犯罪、サイバー犯罪、経済犯罪など、多様化する脅威に対応するための国際協力のハブとして機能してきました。

特に、リアルタイムで犯罪情報を共有する「I-24/7」ネットワークや、国際手配制度である「Notices」システムは、世界中の捜査機関にとって不可欠なツールとなっています。日本もまた、多額の分担金拠出や法制度整備、人材派遣を通じてインターポールの活動を積極的に支え、国際社会の安全確保に貢献しています。

INTERPOL(インターポール)とは何か?その基本的な役割

インターポール、正式名称を国際刑事警察機構(ICPO)といい、世界各国の警察機関が連携し、国際犯罪の防止と鎮圧を目的として設立された国際組織です。本部はフランスのリヨンに置かれ、2023年にパラオが加盟したことで、加盟国は196カ国・地域に達しました。インターポールは、加盟国間の情報交換を促進し、犯罪捜査を支援するための様々なツールやサービスを提供しています。

国際社会における警察協力のプラットフォーム

インターポールの最も基本的な役割は、国境を越えて活動する犯罪者や犯罪組織に対抗するため、世界中の警察が効果的に協力できるプラットフォームを提供することです。これには、国際手配書の発行、犯罪に関するデータベースの管理・共有、専門知識や捜査技術の研修などが含まれます。

インターポール自体が捜査権や逮捕権を持つわけではなく、あくまで加盟国の警察機関がそれぞれの国内法に基づいて活動するのを支援する立場にあります。しかし、その情報ネットワークと協力体制は、国際的な指名手配犯の追跡や、大規模な国際犯罪捜査において不可欠なものとなっています。

多様化する国際犯罪への対応

現代の犯罪は、テロリズム、サイバー犯罪、麻薬密輸、人身売買、金融犯罪、環境犯罪など、ますます多様化し、国境を簡単に越えて行われています。インターポールは、これらの脅威に対応するため、専門の対策チームを設け、最新の手口や傾向を分析し、加盟国へ情報提供を行っています。 また、大規模な自然災害や事故が発生した際には、犠牲者の身元確認(DVI)チームを派遣するなど、人道的な支援活動も行っています。

INTERPOLの組織と基本機能

インターポールが国際的な警察協力を効果的に推進できる背景には、その独自の組織構造と機能があります。世界中の加盟国を繋ぐ通信ネットワークや、各国に設置された国家中央事務局(NCB)の活動、そして政治的中立性を保つための原則などが、その基盤となっています。

196カ国を束ねるI-24/7ネットワーク

インターポールは、全加盟国とリヨン本部、そしてシンガポールに設置されたグローバル複合施設(INTERPOL Global Complex for Innovation、略称IGCI)などを結ぶ専用のセキュアな通信ネットワーク「I-24/7」を運用しています。

このネットワークを通じて、各国の警察機関は、盗難・紛失パスポートデータベース(SLTD)、指名手配されている人物、盗難車両、指紋、DNA型など、19種類の中央データベースに24時間365日リアルタイムでアクセスし、情報を照会・共有することが可能です。 2023年には、このデータベースへの年間照会数が74億回に達し、1秒あたり平均231件もの「検索」が世界中の捜査活動を支えました。

国家中央事務局(NCB)の役割

インターポールの各加盟国には、自国の法執行機関とインターポール事務総局や他の加盟国のNCBとの間の窓口として機能する国家中央事務局(National Central Bureau、略称NCB)が一つずつ設置されています。

日本では、警察庁刑事局組織犯罪対策部国際課がNCBとしての役割を担っており、インターポール憲章と国内法に基づき、国際的な犯罪捜査協力の要請や情報交換を行っています。NCBは、国外へ逃亡した被疑者の追跡や、国内に潜伏する外国の指名手配犯に関する情報収集など、国際捜査共助において中心的な役割を果たします。

政治的中立性と財政基盤

インターポールは、その憲章第3条において、「機構が政治的、軍事的、宗教的または人種的性格を帯びたいかなる介入または活動を行うことも厳しく禁じる」と定め、政治的中立性を厳格に守っています。これにより、国家間の政治的な対立に左右されることなく、純粋に刑事警察間の協力を追求することが可能となっています。

インターポールの財政は、主に加盟国からの分担金によって賄われています。 日本は、2025年の予算において約779万ユーロ(約12億7100万円、1ユーロ=163円換算)を拠出しており、アメリカ、ドイツに次ぐ主要な財政支援国の一つとして、インターポールの安定的な運営に貢献しています。

Notices(国際手配)システムの進化

インターポールの活動の中核をなすものの一つが、国際手配システムである「Notices」です。色分けされた手配書は、それぞれ異なる目的と法的根拠に基づいて発行され、国際社会の安全を脅かす様々な事案に対応するために進化を続けています。

七色+シルバーで広がる国際手配

インターポールのNoticesは、その目的や緊急性に応じて色分けされており、最もよく知られているのは、被疑者の逮捕と身柄引き渡しを求める「赤手配(Red Notice)」です。 その他にも、行方不明者の捜索や身元不明死体の身元確認を求める「黄手配(Yellow Notice)」、犯罪の手口に関する情報提供を求める「紫手配(Purple Notice)」など、現在では合計8種類の手配書が運用されています。

近年では、国際的な組織犯罪やテロ組織の資金源を断つことの重要性が高まっていることから、2025年には新たに「シルバーノーティス(Silver Notice)」が正式に導入されました。これは、犯罪収益の追跡、凍結、没収を目的とするもので、不正な資金の流れを国際的に差し押さえるための協力を加盟国に要請するものです。

SLTDデータベースとの連携強化

紛失・盗難パスポートデータベース(Stolen and Lost Travel Documents、略称SLTD)は、国際的なテロリストや犯罪者の移動を阻止するための重要なツールです。

 このデータベースには1億3800万件以上のパスポート情報が登録されており、2023年だけで36億回の照会があり、約23万件のヒットが確認されました。I-24/7ネットワークを通じて、各国の出入国管理当局の端末とリアルタイムで連携し、偽造・変造パスポートや他人のパスポートを利用した不正な出入国を水際で防ぐ上で大きな役割を果たしています。

日本からの発行事例とその影響

日本もインターポールのNoticesシステムを積極的に活用しており、重大事件の被疑者が国外へ逃亡した場合などに国際手配を要請しています。

例えば、過去には六本木のクラブで起きた集団暴行致死事件の主犯格とされる人物に対して赤手配が、また、著名人が関与したとされる脅迫事件で国外に滞在していた人物に対しては、捜査への協力を求める「青手配(Blue Notice)」が発行され、国際的な注目を集めました。これらの手配は、被疑者の所在特定やその後の法的手続きを進める上で重要な役割を果たしました。

現場で動くINTERPOL――主要作戦と成功例

インターポールは、データベースの提供や手配書の発行だけでなく、具体的な国際共同作戦を指揮・調整することで、国境を越える犯罪組織の摘発に直接的に貢献しています。これらの作戦は、加盟国の法執行機関との緊密な連携のもと、特定の犯罪分野や地域をターゲットに展開されます。

Operation Jackal III:西アフリカ金融犯罪の壊滅

西アフリカ地域では、オンライン詐欺やマネーロンダリングなどの金融犯罪が深刻な問題となっています。2024年4月から7月にかけて実施された「オペレーション・ジャッカルIII」には21カ国が参加し、主に「ブラックアックス」として知られる大規模な国際犯罪組織のメンバーの摘発に焦点が当てられました。

この作戦により、300人以上の逮捕者が出て、約300万米ドル相当の不正資金が押収され、720以上の銀行口座が凍結されるなど、大きな成果を上げました。このような作戦は、国際的な犯罪ネットワークに打撃を与えるだけでなく、被害の拡大防止にも繋がります。

Operation Serengeti:アフリカ19カ国で1000人逮捕

サイバー犯罪は、その匿名性と迅速性から、国境を越えて広範囲に被害をもたらします。2024年末にアフリカ19カ国が参加して行われた「オペレーション・セレレンゲティ」は、ランサムウェア攻撃、ビジネスメール詐欺(BEC)、フィッシング詐欺など、多岐にわたるサイバー犯罪の一斉掃討作戦でした。

この作戦では、1000人以上の容疑者が検挙され、約1億9300万米ドルの被害が阻止されたと報告されています。特筆すべきは、AIを利用して生成されたマルウェアの拡散など、新たな手口の犯罪も摘発対象となった点であり、進化するサイバー脅威への対応能力を示すものとなりました。

DVIとI-Familia:災害・行方不明者対応における国際協力

インターポールは、犯罪捜査だけでなく、大規模災害や事故における人道支援活動にも力を入れています。災害犠牲者身元確認(Disaster Victim Identification、略称DVI)チームは、航空機事故や自然災害発生時に現地へ派遣され、DNA鑑定、歯型、指紋などを用いて犠牲者の迅速な身元特定を支援します。例えば、エチオピア航空302便の墜落事故では、インターポールのDVIチームがDNA照合を通じて多くの犠牲者の身元特定に貢献しました。

さらに、2021年には、行方不明になっている人物を家族のDNAデータを通じて国際的に照合するデータベース「I-Familia」の運用が開始されました。これは、特に長期間にわたる行方不明者の捜索や、身元不明遺体の特定において画期的なツールとなることが期待されており、ベルギーなど一部の国では、このシステムを利用するための国内法整備も進んでいます。

日本とINTERPOL――財政・法制・実務における貢献

日本は、インターポールの活動を多方面から支援しており、国際社会の安全確保において重要な役割を果たしています。財政的な貢献に加え、国内法の整備や捜査実務における国際協力も積極的に行っています。

巨額の分担金と人材派遣

日本はインターポールにとって主要な財政支援国の一つであり、毎年の分担金はインターポールの運営予算の大きな部分を占めています。2025年の予算では約779万ユーロ(約12億7100万円)を拠出しており、これは加盟国中3番目に多い額です。この資金は、I-24/7ネットワークの維持、データベースの拡充、各種捜査支援プログラムの実施などに活用されています。

また、日本は警察庁から専門知識を持つ警察官をフランス・リヨンの事務総局やシンガポールのグローバル複合施設(IGCI)へ定期的に派遣しています。これらの派遣職員は、サイバー犯罪対策、テロ対策、組織犯罪分析などの分野で専門性を発揮し、インターポールの機能強化に直接的に貢献しています。

国際捜査共助法制の整備

国境を越える犯罪に対処するためには、各国が互いに捜査協力を円滑に行える法的な枠組みが不可欠です。日本では、1980年に「国際捜査共助法」が制定され、その後、2004年の改正で現在の「国際捜査共助等に関する法律」となりました。

この法律は、外国の捜査機関やインターポールからの要請に基づき、日本国内での証拠収集、関係者の聴取、犯罪人引渡しなどの手続きを定めており、国際的な捜査協力を迅速かつ的確に行うための法的根拠となっています。

国外逃亡犯逮捕の協働例

インターポールを通じた国際協力は、具体的な事件解決にも繋がっています。例えば、2005年に発生した大規模な闇金融事件では、主犯格の経営者が国外へ逃亡しましたが、インターポールを通じて国際手配されると共に、アメリカの連邦捜査局(FBI)やオーストラリア連邦警察などとの緊密な情報交換と連携捜査が行われました。

その結果、被疑者は公海上の航空機内で逮捕され、日本へ送還されるという成果を上げています。これは、複数の国の法執行機関がインターポールを介して連携することで、国境を越えた逃亡犯を追跡し、法の裁きを受けさせることが可能であることを示す好例です。

新興脅威とイノベーションセンター

テクノロジーの急速な進展は、私たちの生活を豊かにする一方で、新たな犯罪の形態を生み出し、法執行機関にこれまでにない課題を突きつけています。インターポールは、これらの新興脅威に対応するため、シンガポールにグローバル複合施設(IGCI)を設置し、イノベーションの推進と国際協力の強化に取り組んでいます。

サイバー空間の多層化リスクと日本の対応

サイバー攻撃はますます巧妙化・組織化しており、国家が関与するAPT(Advanced Persistent Threat)攻撃や、ソフトウェアの脆弱性が修正される前に攻撃を仕掛けるゼロデイ攻撃などが深刻な脅威となっています。 これらの攻撃は、重要インフラの機能停止、大規模な情報漏洩、経済的損失など、国家の安全保障を揺るがしかねない被害をもたらします。

日本政府もこの状況を重く見ており、2024年に閣議決定された「サイバーセキュリティ戦略」などにおいて、「能動的サイバー防御」の導入に向けた法整備を急ぐ方針を示しています。これは、サイバー攻撃を事前に察知し、場合によっては攻撃元に対して無力化措置を講じることも視野に入れた、より積極的な防衛体制を目指すものです。こうした国内の取り組みと並行して、インターポールを通じた国際的な情報共有や捜査協力が一層重要になっています。

シンガポール・イノベーションセンター(IGCI)の最前線

2015年に開設されたインターポールのグローバル複合施設(IGCI)は、サイバー犯罪対策、研究開発、能力構築の拠点として機能しています。 IGCI内のイノベーションセンターでは、AI(人工知能)を活用した捜査手法の開発、デジタルフォレンジック技術の研究、ダークウェブの監視、仮想通貨を利用した犯罪の追跡など、最先端の取り組みが進められています。

2023年には、インターポールのデータベースへの年間照会数が74億回に達しましたが、その多くがこのIGCIの技術基盤によって支えられています。また、水中ドローンやロボットK9(警察犬の代替)といった先進技術の実証実験も行われており、未来の捜査手法の確立を目指しています。

AI・量子時代の捜査手法の革新

AI・量子時代の捜査手法の革新

AI技術の進化は、ディープフェイク(AIを用いた高度な偽造映像・音声)による情報操作や、AIを利用したマルウェアの自動生成など、新たな脅威を生み出しています。IGCIでは、これらの脅威に対抗するため、ディープフェイク検出技術やAIを用いた不正行為のパターン分析などの研究プロジェクトを推進しています。

さらに、将来的に実用化が見込まれる量子コンピュータは、現在の暗号技術を無力化する可能性を秘めており、法執行機関の通信やデータの秘匿性に重大な影響を与える可能性があります。インターポールは、量子暗号時代に対応するための新たなセキュリティ技術の研究にも着手しており、法執行機関、学術界、民間企業が連携して、未来の課題に備えています。

専門家の声と学術的視点

インターポールの活動とその意義については、実務家だけでなく、学術研究の対象としても注目されています。国際法、国際関係論、犯罪学など、多様な分野の研究者が、インターポールの役割や課題、そして今後の展望について活発な議論を展開しています。

国際警察協力研究の最新論点

国際警察協力のあり方は、常に変化する国際情勢や犯罪の動向に合わせて進化していく必要があります。2024年に発表された学術論文「The Past, Present and Future of International Police Cooperation」では、インターポールの憲章第3条に定められた「政治的中立性」の原則が、地政学的な緊張が高まる現代において、改めてその重要性を増していると指摘されています。

大国間の対立や地域紛争が頻発する中でも、インターポールが純粋に警察間の実務協力を促進するプラットフォームとしての機能を維持できるかどうかが、今後の国際犯罪対策の鍵を握ると論じられています。また、サイバー犯罪や金融犯罪など、国境を越えて瞬時に影響が広がる犯罪に対して、各国が主権を尊重しつつ、いかに効果的な協力体制を構築できるかという点も、重要な研究テーマとなっています。

経済安全保障と犯罪対策の融合

近年の国際社会においては、経済活動と安全保障が密接に関連し合う「経済安全保障」という概念が重視されています。不正な資金の流れは、経済システムを不安定化させるだけでなく、テロ組織や国際犯罪組織の活動を支えることにも繋がりかねません。

金融活動作業部会(FATF)、エグモント・グループ(各国の金融情報機関で構成される組織)、そしてインターポールが共同で発表した報告書では、特にサイバー詐欺によって生み出された不正資金が、世界の金融システムに深刻な打撃を与える可能性があると警鐘を鳴らしています。

この報告書では、インターポールが導入を進めている「シルバーノーティス」のような、資産追跡と凍結・没収に特化した国際手配の仕組みが、不正収益のグローバルな流れを断ち切る上で有効であると分析しています。経済安全保障の観点からも、国際的な犯罪対策の強化が求められているのです。

今後の展望と課題

創設から100年以上を経て、インターポールは21世紀の複雑な課題に直面しています。地政学的な変動、急速な技術革新、そして進化し続ける犯罪の手口に対し、インターポールがその有効性を維持し、さらに発展させていくためには、いくつかの重要な課題に取り組む必要があります。

政治的中立性の堅持と信頼の維持

大国間の対立や地域紛争が国際関係に緊張をもたらす中で、インターポールが政治的影響力から独立し、全ての加盟国に対して公平な「警察間の協力プラットフォーム」としての役割を堅持できるかが極めて重要です。

加盟国は、外交上の摩擦や政治的対立を乗り越え、テロ対策、組織犯罪対策、サイバー犯罪対策といった実務レベルでの協力を継続し、強化していく必要があります。インターポールへの信頼は、その中立性と実効性にかかっています。

データ保護と倫理的配慮の徹底

顔認証AI、遺伝子解析、行動予測アルゴリズムなど、先進技術の捜査への活用は、犯罪解決能力を飛躍的に向上させる可能性を秘めている一方で、個人のプライバシーや人権を侵害するリスクも伴います。

 インターポールが国際的に収集・共有する膨大な個人情報や生体認証データは、厳格な管理体制と倫理基準に基づいて取り扱われる必要があります。例えば、家族のDNAによる国際身元照合システム「I-Familia」の運用においては、データの収集・保管・利用に関する明確な指針を定め、透明性を確保することが不可欠です。また、EUの一般データ保護規則(GDPR)のような国際的なデータ保護基準との整合性を図り、加盟国間での信頼醸成に努める必要があります。

包摂的ガバナンスと能力構築支援

法執行能力や技術的リソースは、国によって大きな格差が存在します。インターポールが真にグローバルな組織として機能するためには、開発途上国や小規模な加盟国の捜査能力向上を支援し、より多くの国がインターポールの提供するデータベースや先進的な捜査ツールへ公平にアクセスできる体制を整備することが重要です。シンガポールのイノベーションセンター(IGCI)は、クラウドベースのプラットフォームや遠隔研修プログラムなどを通じて、地理的な制約を超えた能力構築支援を推進しています。

このような包摂的なアプローチは、国際社会全体の安全レベルを引き上げるために不可欠です。

用語解説

  • I-24/7(アイ・トゥエンティフォー・セブン): インターポールの加盟国を結ぶ、安全性の高い専用通信ネットワーク。19種類の中央データベースへのリアルタイム照会が可能。

  • NCB(エヌシービー/国家中央事務局): National Central Bureauの略。各加盟国に設置され、自国の警察機関とインターポール事務総局や他のNCBとの間の連絡調整を担う。日本では警察庁が担当。

  • Red Notice(レッドノーティス/赤手配書): 裁判所の発行した逮捕状に基づき、被疑者の身柄の引き渡しを目的として、その所在の特定と身柄の拘束を加盟国に求める国際手配書。

  • Silver Notice(シルバーノーティス): 2025年に正式導入された、犯罪収益や不正資産の追跡、凍結、没収を目的とする新しい国際手配書。

  • SLTD(エスエルティディー/盗難・紛失パスポートデータベース): Stolen and Lost Travel Documents databaseの略。紛失または盗難されたパスポートの情報を集約したデータベースで、不正な国境移動の防止に活用される。

  • DVI(ディーヴイアイ/災害犠牲者身元確認): Disaster Victim Identificationの略。大規模災害や事故の際に、犠牲者の身元を迅速かつ正確に特定するための国際的な手続きや専門チーム。

  • I-Familia(アイ・ファミリア): 行方不明者や身元不明遺体の身元を、家族から提供されたDNAデータと照合することによって特定するための国際データベース。

  • IGCI(アイジーシーアイ/グローバル複合施設): INTERPOL Global Complex for Innovationの略。シンガポールにあり、サイバー犯罪対策、研究開発、能力構築の拠点。

  • Operation Jackal III(オペレーション・ジャッカル・スリー): 西アフリカ地域における金融犯罪、特に「ブラックアックス」などの国際犯罪組織を対象としたインターポールの共同作戦。

  • Operation Serengeti(オペレーション・セレレンゲティ): アフリカ諸国におけるランサムウェア、ビジネスメール詐欺などのサイバー犯罪に対する大規模な掃討作戦。

  • 能動的サイバー防御: サイバー攻撃を事前に察知し、場合によっては攻撃元に対して無力化措置を講じることも視野に入れた、より積極的なサイバーセキュリティ戦略。日本でも導入が検討されている。

まとめと今後の展望

INTERPOL

インターポールは、創設から1世紀以上にわたり、国際社会の平和と安全を守るという使命のもと、絶えず変化する世界の脅威に対応し、進化を続けてきました。サイバー空間と実世界の境界が曖昧になり、金融システムがグローバルに結びつき、地政学的なリスクが複雑に絡み合う現代において、その役割はますます重要性を増しています。

日本は、主要な分担金拠出国として、また、法制度の整備や専門人材の派遣を通じて、インターポールの活動を力強く支えてきました。今後、日本国内で「能動的サイバー防御」といった新たな安全保障戦略が進められる中で、インターポールを介した国際的な情報共有や捜査協力は、その実効性を高める上で不可欠な両輪となるでしょう。

インターポールが今後もその使命を果たし続けるためには、厳格な「政治的中立性」を堅持し、全ての加盟国からの信頼を維持することが最も重要です。同時に、AIやビッグデータといった先端技術を倫理的かつ効果的に活用し、新興国の捜査能力向上を支援するなど、包摂的で未来志向の警察協力を実現していく必要があります。次の100年に向けて、インターポールが国際社会の期待に応え、より安全な世界の実現に貢献できるか否かは、これらの課題に真摯に取り組み続けられるかにかかっていると言えるでしょう。

参考リンク一覧

  • 出典:INTERPOL公式「Membership of INTERPOL」(URL

  • 出典:警察庁「2025 国際刑事警察機構 (PDF)」(URL

  • 出典:警察庁「国際犯罪対策」(URL

  • 出典:警察庁白書「外国の治安機関との連携」(URL

  • 出典:INTERPOL公式「Operation Jackal III」(URL

  • 出典:AP通信「Interpol clamps down on cybercrime and arrests over 1,000 suspects in Africa」(URL

  • 出典:INTERPOL公式「Disaster Victim Identification」(URL

  • 出典:INTERPOL公式「I-Familia」(URL

  • 出典:NISC「サイバーセキュリティ2024 概要 (PDF)」(URL

  • 出典:Financial Times「Inside Interpol’s innovation lab」(URL

  • 出典:INTERPOL 年次報告2023 (PDF)(URL) 

  • 出典:INTERPOL公式「SLTD database」(URL

  • 出典:INTERPOL公式「Silver Notice発行」(URL

  • 出典:FATF/OECD/INTERPOL/Egmont「Illicit Financial Flows from Cyber-Enabled Fraud」(URL

  • 出典:ResearchGate論文「The Past, Present and Future of International Police Cooperation」(URL

  • 出典:INTERPOL Innovation Centre(URL

  • 出典:警察庁「警察活動の最前線 -サイバー犯罪対策~IGCIに出向して~」(URL

  • 出典:NPO Institute of Digital Forensics「第299号コラム「INTERPOLが設立するデジタル・フォレンジック・ラボ」」(URL

  • 出典:海外ドラマNAVI「『クロッシング・ライン』ICC特別捜査チームのような”国際警察”は実在するの?」(URL

  • 出典:INTERPOL「Data protection」(URL

  • 出典:INTERPOL「Privacy policy」(URL

  • 出典:ICRC「Symposium on Cybersecurity and Data Protection in Humanitarian Action」(URL

  • 出典:大和総研「能動的サイバー防御の導入に向けた政策動向」(URL

  • 出典:経済同友会「「Cyber Security Everywhere」時代」(URL

  • 出典:トレンドマイクロ「能動的サイバー防御とは?日本でも必要性が高まる理由を解説」(URL

  • 出典:PwC Japanグループ「能動的サイバー防御有識者会議の提言解説」(URL

  • 出典:外務省「マネー・ローンダリング(資金洗浄)」(URL

  • 出典:トレンドマイクロ「インターポールとトレンドマイクロのサイバー犯罪撲滅への取り組み」(URL

  • 出典:FATF「High-Risk Jurisdictions subject to a Call for Action – 21 February 2025」(URL

  • 出典:財務省「教えて!マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策」(URL

  • 出典:国税庁「税務当局によるマネー・ロンダリング対策」(URL

  • 出典:警察庁「JAFICと国際機関等の連携」(URL

  • 出典:PC-Webzine「インターポール」(URL


この記事はきりんツールのAIによる自動生成機能で作成されました

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